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落日のサッカー王国ブラジル。いい選手はいてもスターがいなくなった理由 (3ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 いまブラジルのサッカーはどんどん求心力を失ってきている。悲しいことだが、自他ともに認めるサッカー大国ブラジルで、人々の心はサッカーから離れていってしまっている。人々は代表チームにすら愛情を持てないでいる。

 なぜなら彼らは自国を代表する選手たちのプレーを、ほぼ見たことがないのだ。ブラジルで活躍する前に国外に行ってしまった、見たこともない選手たち。そんなチームに親しみは感じないだろう。外国の選手と同じだ。

 コロナウイルス流行前、代表チームはブラジル国内で試合を行なったが、それはブラジルの北の国境近くの町だった。なぜならサンパウロやリオデジャネイロ、ベロオリゾンテやポルトアレグレなど南部の大都市は、代表戦を誘致することに興味がなかったからだ。大都市の大型スタジアムでブラジル代表がプレーしても、スタジアムは空席が目立って採算は取れないし、選手や監督も大都市のメディアから非難されることを望まなかったからだ。

 そこで試合は、大都市から遠く離れた、ブラジル代表の試合などそうそう生では見られない地方都市で行なわれることになった。そこなら人々は代表をありがたがってくれるだろうという算段だ。つまりネイマールでさえ、ブラジル人に愛されているとは言えないのだ。

 それでも優勝すれば人々の心を取り戻せるかもしれないが、今のチームではそれも難しい。代表選手のそれぞれがビッグクラブで活躍し、コンスタントにプレーしていなければ、セレソンが強くなるはずもない。

 とにかく負の連鎖がずっと続いている。ブラジルサッカーは時間をかけて、じわじわとレベルが低下しているのだ。

 こうした現実は、ブラジルが2002年以降、世界のタイトルから遠ざかっていることが如実に証明している。ほとんどはベスト8止まりで、自国開催の大会でさえ4位だった。2022年のカタールW杯は、ブラジルの今を映し出す鏡になるだろうが、本格的な改革と大きな運がなければ、ブラジルが優勝する姿を見ることは難しいだろう。

 これは、私が40年近い記者生活で書いたものの中でも、最も悲しい記事だと思う。

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