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落日のサッカー王国ブラジル。いい選手はいてもスターがいなくなった理由 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

 最後の成功例と言われているネイマールも、このストーリーと無関係ではない。ネイマールは世界に名だたるスターにはなったが、彼が本当に成功しているとは言い難いだろう。彼の実力からすれば、もっともっと多くの結果を残すことができたはずだ。

 では、若手選手はブラジル国内に残ったほうがいいのかといえば、これもまた別な問題に直面する。ブラジルの国内リーグは年々、レベル低下の一途をたどっているからだ。

 まず何よりもクラブにお金がない。クラブの経済的状況はここ20年でも最低だ。どこのチームも100万ドルないし1000万ドル単位の借金がある。一流選手を獲得することも、また保有し続けることもできない。給料の支払いは遅れがちで選手のモチベーションも上がらない。

 それに加えて監督の質だ。これは受け入れがたい現実でもあるが、ブラジルの監督たちの多くは、ブラジル国内でさえ仕事を見つけることが難しくなっている。ヨーロッパで多くのビッグチームのベンチを任されているアルゼンチン人の監督とは対照的だ。ベテランのバンデルレイ・ルシェンブルゴ、エメルソン・レオン、そしてドゥンガでさえもここ何年も失業中だし、若く優秀な監督も生まれてこない。

 そのためここ5年間でおよそ20人の外国人監督がブラジルのクラブを率いることになった。その中でも一番多いのはポルトガル人監督で、3年間で6人が来ている。それもフラメンゴやパルメイラスなどのトップチームだ。

 かつての名将と言われたブラジル人監督たちは時代遅れとみなされれ、ブラジルの監督育成は他の南米諸国よりもかなり遅れている。

 こうしたことはすべて若い選手の育成に影響してくる。かつては有能な監督や、チームのベテランの優秀な選手たちが、若手の手本となり、教育していた。しかし今はほぼ放置状態だ。戦術やテクニックの基礎なくしては、どんな選手もその才能を開花させることはできない。

 優秀な選手がいないから、監督はいいチームを作れず、おまけに選手たちはシーズン途中でも、いいオファーがあれば海外に行ってしまうので、監督たちは戦術を練ることができない。こんな状況が続く中では、いいサッカーをピッチで見せるのは難しい。

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