ネイマール以降、ブラジルから真のスター選手が生まれないのはなぜか

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

落日のサッカー王国ブラジル(前編)

 ペレ、リベリーノ、ジャイルジーニョ、ソクラテス、ジーコ、ファルカン、カフー、ドゥンガ、ロマーリオ、ベベット、リバウド、ロナウド、ロナウジーニョ、カカ、そしてネイマール......。

 ブラジルはレベルの高い選手を、常に世界へと供給し続けてきた。まだテレビがなかった1940年代から現代に至るまで、ブラジルにはどの時代も、偉大な選手が複数、存在していた。

 セレソンの「3R」を覚えているだろうか。2002年にブラジルが日韓W杯で優勝した時のメンバーだ。ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ。彼らには世界中が拍手を贈った。1982年スペインW杯の「黄金のカルテット」もそうだ。ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾもブラジルの誇りだった。

 これら名の知られた選手はほんの一部にしか過ぎない。その他にも多くの選手がブラジルから世界へと出て行った。ブラジルはサッカー選手の輸出大国だ。90年代以降、統計がとれているだけでもゆうに2000人以上のブラジル人プレーヤーが国外のクラブに移籍した、他の南米諸国に、アジアに、アフリカに、オセアニアに。しかし、やはり一番大きなマーケットはヨーロッパだ。

 その状況は今も変わらない。今でも多くのブラジル人選手が世界に供給されている。しかし、ひとつだけ違うことがある。ここ最近、ブラジルから本物の「フェノメノ(超常現象)」が輩出されていないことだ。50年間途切れなかったブラジルのスター選手が、ここ数年、誕生していない。

ネイマール(パリ・サンジェルマン)はブラジルが生んだ最後のスターなのか photo by AFLOネイマール(パリ・サンジェルマン)はブラジルが生んだ最後のスターなのか photo by AFLO 1980年代から、ブラジルのトップクラスの選手はひとりの例外もなく、ヨーロッパでプレーしている。現在もそうだ。しかし、それらのチームで絶対的なスターとして君臨している選手は、ネイマール以降、存在しない。つまりもう10年以上、ブラジルは新たなスターの誕生を見ていないのだ。

 もちろんその間にも希望はあった。「次世代のスター」「第2の○○」などと呼ばれる選手は、それなりにいた。しかし彼らが本格的にブレイクすることはなかった。そして今でもブラジルのトップ選手といえば、ネイマールの名を挙げるしかない。

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