小野伸二以上。歴代世界最高の「両利き」プレーヤーはベルギー人FW (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

◆和製ロナウド、小野伸二2世...。消えていった天才Jリーガーたち>>

 ルク・ニリス。引退して今年で20年が経過する。それ以前も、それ以降もサッカーを見続けてきた筆者だが、彼を超える両利き選手に、いまだ遭遇したことはない。

 ニリスが、アンデルレヒトからオランダのPSVアイントホーフェンに移籍したのは1994-95シーズンだった。PSVのライバルチームであるアヤックスが、ウィーンのエルンスト・ハッペルで行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)決勝でミランを倒し、22年ぶり4度目の欧州一に輝いたシーズンと一致していた。

 オランダへ出かける目的は一にアヤックス、二にオランダ代表チームという感じだった。その合間に観戦するPSVの試合にしても、当初、一番楽しみにしていたのはニリスと同じタイミングでPSV入りしたブラジルの至宝、ロナウドだった。その直前に開催されたアメリカW杯で、ベルギー代表として出場したニリスのプレーを見ていたはずだが、観戦動機の中に含まれていなかった。

 それだけに驚かされることになった。アヤックスの選手より、PSVの9番ロナウドより、ロナウドと2トップを組むPSVの10番に目を奪われた。実際、1995-96シーズンには、同僚のロナウドやアヤックスの面々を抑え堂々、オランダ年間最優秀選手にも選出されている。

 ロナウドは引退後、最高のパートナーはと問われると、ニリスの名前を挙げたという。その後、ロナウドがバルセロナに移籍した後、コンビを組むことになったルート・ファン・ニステルローイも同様だった。ニリスこそ、ベルギーサッカー史上最高の選手だと論じている。

 筆者もまったく同感だが、こう言っては何だが、当時、CLを制したアヤックスの快進撃でさえ満足に視聴できる環境になかった日本在住のサッカーファンには、賛同を得にくい話だと思う。

 ベルギーと言えば、まず1986年メキシコW杯で名を売ったヤン・クーレマンス、ベルギーの至宝と呼ばれたエンツォ・シーフォ、2002年日韓共催で活躍した闘将、マルク・ヴィルモッツの名前を想起するだろう。現役選手では、エデン・アザール、ロメル・ルカク、ケビン・デ・ブライネあたりになるだろう。そうした意味でニリスという希代の両利きは、エアポケットにはまったかのような状態にある、判官贔屓を掻き立てられる選手になる。

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