主役級「曲者」。ディ・マリアはビッグクラブに不可欠な名バイプレーヤー

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

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サッカースターの技術・戦術解剖
第54回 アンヘル・ディ・マリア

<圧倒的バイプレーヤー>

 チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝、パリ・サンジェルマン(フランス)は昨季ファイナルのリベンジを果たし、バイエルン(ドイツ)を王座から引きずり下ろした。

パリSGのディ・マリア。今季も曲者ぶりを存分に発揮しているパリSGのディ・マリア。今季も曲者ぶりを存分に発揮している 勝利の立役者はキリアン・エムバペ(フランス)とネイマール(ブラジル)だ。この2人のカウンターアタックのスピードは凄まじく、普段はDFのダビド・アラバ(オーストリア)をMFに上げていたバイエルンDF陣では対応できなかった。

 パリSGは、バイエルンのハイプレスに怯まなかったのも勝因だろう。何度かは引っかかっていたとはいえ、それでもプレッシャーを恐れずにパスをつなぎ、わずかな隙間をかいくぐってネイマール、エムバペにボールをつなげてカウンターを発動させていた。

 2試合合計は3-3、パリSGはアウェーで3-2、ホームで0-1だった。ただ、第2レグのホームでは、ネイマールがポストやパーに3回もシュートを当てたチャンスがあった。勝ち抜けの資格は十分だったと思う。

 ネイマールとエムバペの威力が印象的な2試合だったが、アンヘル・ディ・マリア(アルゼンチン)もいつものとおり渋い脇役を演じていた。

 ディ・マリアは「曲者」だ。主役という感じはあまりしない。そのかわり脇を固めるのに彼ほどの選手もそうはいない。

 細身でちょっと猫背、信じられないぐらい身軽。左足の足首はぐにゃぐにゃと変化して、踏み出しと着地が全然読めないボールの持ち方をする。こう言っては何だが、時代劇なら天井裏に潜んでいる役がよく似合う。二本差しの侍ではなく忍者だ。同じヒーローでも、スーパーマンではなくてスパイダーマンのイメージである。

 ディ・マリアは一度だけ「主役」に抜擢されたことがあった。2014年の夏、当時のプレミアリーグ最高額の移籍金5970万ポンド(約102億6830万円)でマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)に迎えられている。背番号はユナイテッドのエースナンバーである7番だった。

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