「偽SB」「偽9番」サッカーの戦術は背景を考えるともっと面白くなる (2ページ目)
選手たちは戦況に応じて立ち位置を変えながら、攻撃を機能させていたのだが、このなかでメッシの見せたプレーは、従来のセンターフォワード、いわゆる相手ゴール前にデンと構えて、ペナルティエリア付近でシュートチャンスを待つ9番の役割からはかけ離れていた。
そして、グアルディオラ監督がバイエルンを率いた頃に注目されたのが『偽SB』だ。
一般的にサイドバックの攻撃参加というと、サイドライン沿いをオーバーラップして中央にクロスを送るイメージが強いが、偽SBは攻撃時に中盤に加わり、まるでボランチのような中央寄りのエリアでプレーをする。これまでのSB像とは違う役割をこなしている。
Jリーグでもこうした動きをするSBが増えてきている。メリットのひとつとしては、前線のサイドアタッカーに後方からパスを通しやすいことがある。そのため攻撃面のメリットが強調されがちだが、グアルディオラ監督の偽SBは、「カウンター対策」として守備を意識して生み出した背景もある。
グアルディオラ監督がバイエルンを率いた当初、ボールポゼッション率を高めて相手陣に押し込んでも、厳しいプレッシャーを受けてボールを奪われ、カウンターから失点するケースがたびたびあった。その対応策として生み出されたのが、攻撃時にSBを中盤中央寄りでプレーさせることだった。
カウンターを受けた時、中央を手薄にして突破されると一気にゴール前へと迫られてしまうため、サイドバックを攻撃時から中央に絞らせて厚みを持たせる。これだとサイドにスペースができてしまうが、カウンターを仕掛けてくる相手がゴール前に到達するにはサイド経由となって時間がかかるため、中央を一気に進まれるよりリスクは減少する。これによってバイエルンは、カウンターからの失点を減らすことに成功した。
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