バルサの新戦術は「デジタル化」。成否を握る20歳のキーマンが現れた
無料会員限定記事
サッカースターの技術・戦術解剖
第51回 セルジーニョ・デスト
<バルセロナで今季最大の発見>
セルジーニョ・デストは、バルセロナで初のアメリカ人選手だが、生まれも育ちもオランダである。父親がスリナム系のアメリカ人。代表チームはアメリカを選択したので、サッカーでの国籍はアメリカ人になるわけだ。
バルセロナの新戦術のキーマンになっている、セルジーニョ・デスト 12歳でアヤックスの下部組織に入り、トップチームを経て2020年10月にバルセロナと5年契約を結んだ。
今季最大の発見と言っていいだろう。
高水準のスピードとテクニックを持つ、20歳のサイドバック。たしかにデストは、前途有望な若手ではある。ただ、バルセロナでレギュラーポジションをつかめたのには、チーム事情も関係している。
昨季のチャンピオンズリーグでバルセロナは、バイエルンに2-8の大惨敗を喫した。リオネル・メッシを中心とした時代の終わりの始まりであり、バルセロナの変革は待ったなしとなった。
今季就任したロナルド・クーマン新監督は試行錯誤を重ね、ようやく一つの答えを導きだしている。それは奇しくもかつてバルサの黄金時代を築いた、ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティと同じもので、そこにはデストが必要だった。
ペップの築いた黄金時代のあと、後継の監督たちはそれぞれに小さな変革を行なってきている。ペップが実現させた理想的なバルサ・スタイルを損ねることなく、年々存在感を増していったメッシを生かし切るのが命題だった。変革というより修正を繰り返してきたわけだが、バイエルン戦の大敗でそれも限界だと思い知らされた。
クーマン監督の答えは、システム的には3バックの導入である。
敵陣に攻め込んだ時の形は、かつての「WMシステム」と似ている。3人のディフェンダー、2人のハーフバック、2人のインサイドフォワード、2人のウイング、そして1人のセンターフォワードだ。
1 / 3