「偽SB」「偽9番」サッカーの戦術は背景を考えるともっと面白くなる

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

福田正博 フットボール原論

■最近サッカーの解説でよく見聞きする、「偽9番」や「偽サイドバック」という言葉。その状況を説明できるサッカーファンも多いはず。加えて、なぜそうした戦術が生まれたのかまで考えると、サッカーを見るのがもっと楽しくなると、福田正博氏は指摘する。

 近年、『偽9番』や『偽サイドバック(SB)』といった言葉が使われるようになっている。『偽』とはなんだろうか? これは「これまでの固定概念にはない役割をする選手」「従来のそのポジションとは少し異なるプレーをする選手」といった意味に近いだろう。

前線から中盤に下りてくるプレーがすっかり定着したメッシ前線から中盤に下りてくるプレーがすっかり定着したメッシ 偽9番が話題になり始めたのはジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)の戦術が要因だろう。彼がバルセロナを率いた時代に、リオネル・メッシを1トップに置いたことが、『偽9番』という戦術用語が現代サッカーで浸透したきっかけだ。

 2008年から12年までペップはバルセロナを率いたが、09年に獲得したズラタン・イブラヒモビッチ(現ミラン)が1シーズンでチームを去ったことで、メッシを1トップに据える布陣を採用した。

 凡庸な監督ならイブラヒモビッチがいないなら、代わりになる近いタイプの選手を探そうとするだろう。だが、イブラヒモビッチの代わりになるセンターフォワードを獲得せずに、既存戦力を最大限に生かすため、またメッシという才能をより輝かせるための戦術を考案した。これこそがペップの凄さでもある。

 メッシは当然ながら生粋のセンターフォワードではないので、ポジションを離れて自由に動きまわる。メッシが動いて空いた1トップのスペースをほかの選手が使ったり、サイドに張っている選手が中央に入ってきて2トップのようになったり、DFの裏に抜け出す選手もいる。

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