ロナウジーニョよりベッカム。歴代「ノールックパス」の使い手No.1 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 見ないで蹴る。アレッサンドロ・デル・ピエロの場合は、ノールックパスならぬ、ノールックシュートになる。ゴールに向かって左45度。デル・ピエロは、この位置からのシュートを十八番にしていた。「デル・ピエロ・ゾーン」と命名されていたほどだ。ゴールとマーカーを背にしながらシュートに及ぶのだが、その瞬間、彼の頭の中には、毎度ゴールマウスが鮮明に描かれていた。と断言したくなるほど、逆サイドの枠の隅にコントロールされたシュートが飛んでいった。

 だが、ゴールを見ないでシュートを蹴るデル・ピエロ以上に不思議に映ったのはデビッド・ベッカムだ。ゴールの枠の位置は変わらない。そのイメージを焼き付けておいてシュートに及ぶことは、決まるかどうかは別にして、訓練すれば可能な気がする。だが、ターゲットが常に動いている選手となると、難易度は跳ね上がる。

 ベッカムと言われて想起するのは、右サイドからスコンスコンとテンポよく蹴り込むクロスボールだ。マンチェスター・ユナイテッド在籍時代は、特にその傾向が強かった。コントロールされたクロスボールが、中央を走る選手へ、ドンピシャリのタイミングで送り込まれていく。ベッカムが蹴り込むクロスボールは、そうした意味で相手の脅威になっていた。

 こう言っては何だが、ロナウド、メッシ、ネイマール、ロナウジーニョ、デル・ピエロらに比べると、ワンランク落ちる選手だ。しかし、ベッカムは、マンUからレアル・マドリードへ移籍。銀河系軍団の一員としてスタメンを張った。ルックスに恵まれていたこともあるだろうが、ピンポイントクロスという一芸に秀でていた武器を備えていたことがその原因だ。

◆ベッカム様が代表格。その昔、日本人女子が熱狂したイケメンサッカー選手>>

 ベッカムにボールが渡ると、いつクロスが上がっても不思議はないムードになった。対峙する相手左サイドバック(SB)のマークに手を焼き、クロスを上げられずに終わるというシーンはあまり蘇ってこない。相手の左SBはやすやすとベッカムにクロスを入れられていた。

 そのからくりについて、筆者は、バレンシアの左SBとしてチャンピオンズリーグ(CL)を沸かせたイタリア代表選手、アメデオ・カルボーニから話を聞き、「へえ」と納得することになった。

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