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ロナウジーニョよりベッカム。歴代「ノールックパス」の使い手No.1 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 赤木真二●写真 photo by Akagi Shinji

 1999-00、2000-01シーズン、バレンシアとマンUは2シーズン続けてCLで対戦している。いずれもベスト16を4つのグループに分けて争った2次リーグにおいて。つまりベッカムとカルボーニは、ここで計4試合対峙していた。

 カルボーニはビックリしていた。そして、こちらに「聞いてくれよ」言わんばかりの様子で、ベッカムの特異性について切々と訴えかけてきた。

「中の様子なんてまったく見ていないんだ。まったく見ないで、そのままクロスを蹴り込んでくる。こんな選手は初めてだよ。SBにとっては相手がルックアップした瞬間が狙い目なんだ。その間にキッカーとの間を詰める。壁になってコースを消そうとするのだけれど、ベッカムはルックアップしないので、間を取ることができない。まだ蹴ってこないだろうと思って、距離を少し離していると、何の前触れもなく蹴ってくるんだ」

 当時、マンUは4-4-2で、アンディ・コール(イングランド代表)を中心に、ドワイト・ヨーク(トリニダード・トバゴ代表)、テディ・シェリンガム(イングランド代表)、オーレ・グンナー・スールシャール(ノルウェー代表)らが2トップを張っていた。彼らに向けたベッカムのクロスは、見ないで蹴っているにもかかわらず、ほぼ100発100中の精度だった。2トップが飛び込むその先に、わずかに弧を描きながら、寸分の狂いなく飛んでいった。

「中の様子をいつ見ているのか?」

 カルボーニはインタビューの最中も、プレーを回想しながら、しきりに首を捻っていた。

「感覚なんだろう、きっと。本当に見ていないんだから。私には絶対に真似できないプレーだよ」

 対峙したマーカーの、しかも守備にうるさいイタリア人DFの証言だけに、このベッカムの特異性には説得力があった。ノールックパスを武器とする真のナンバーワン選手はベッカム。ロナウジーニョ、ロナウドらとは、放つパスの長さが違う。サッカー界広しといえど、2人といない才能だと断定したくなるのである。

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