ふだんは無視。メディアが女子サッカー選手に注目するのはどんな時か
『特集:女性とスポーツ』第2回
【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】女子サッカーの現在(後編)
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3月8日は国際女性デー。1975年に国連によって制定されたこの日は、女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日だ。スポルティーバでは女性アスリートの地位向上を目指し、さまざまなテーマで「女性とスポーツ」を考えていく。
この記事はSportivaでもおなじみのジャーナリスト、サイモン・クーパー氏が2011年6月に寄稿してくれたものを再録した。時は日本が優勝した女子ワールドカップドイツ大会開幕の直前。あれから10年、変わったこともあるし、変わらないこともある。
2019年フランスW杯の優勝はアメリカ。観客動員は1試合平均2万人を超えた photo by AFLO もちろん僕たちのほとんどは、女性がサッカーをすることを好ましく思っている。でも率直に言えば、女子サッカーを見ようとする人たちはほとんどいない。最高の女子チームに寄せられる賛辞(「もうこれは男子並みのプレーです」)の陰には、寂しい現実がある。
イギリスでは2011年4月、プロサッカーの女子スーパーリーグが結成されたが、ほとんど知られていない。イギリス最高の選手たちがわずかとはいえ報酬をもらってプレーするようになったのに、たいていの試合の観客は100人いるかどうかだ。「親と友だちを差し引いたら、そんなに残らない」と、バーミンガム・シティ・レディーズのスティーブ・シップウェイ会長は言う。アメリカやドイツなど女子サッカー人気が高い国でも、観衆は5000人を超える程度だ。
スタジアムが満員になるのは、国の誇りがかかったときだけだ。1999年のワールドカップ決勝では、アメリカが中国を下すのを約9万人が見た。女子サッカーの観客の最高記録である。今年のワールドカップでも、いくつかの試合のチケットは何週間も前に売り切れた。
メディアは女子サッカーをほとんど無視している。新聞のスポーツ欄は男性のページといっていい。南カリフォルニア大学フェミニスト研究センターによれば、女子スポーツへの関心はこの20年で大きく低下した。2009年にアメリカのスポーツ放送のうち女子スポーツの占める割合は、わずか1.6%だった。
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