2021.03.05

100年前、リバプールに5万人の観客を集めた女子サッカーの数奇な歴史

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

『特集:女性とスポーツ』第1回
【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】女子サッカーの現在(前編)

 3月8日は国際女性デー。1975年に国連によって制定されたこの日は、女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日だ。スポルティーバでは女性アスリートの地位向上を目指し、さまざまなテーマで「女性とスポーツ」を考えていく。

 この記事はSportivaでもおなじみのジャーナリスト、サイモン・クーパー氏が2011年6月に寄稿してくれたものを再録した。時は日本が優勝した女子ワールドカップドイツ大会開幕の直前。あれから10年、変わったこともあるし、変わらないこともある。

2011年にW杯で優勝すると、日本に女子サッカーブームがまき起こった photo by AP/AFLO ずいぶん前のある夏の日曜日、ニューヨークのセントラルパークでヨーロッパ人の友人たちとピクニックをした。僕らのグループは男女3人ずつだった。ランチが終わったころ、誰かがサッカーボールを売りに来た。僕ら男たちは1個買い、それを見て女たちは笑った。男っていつもこうなんだから......。

 僕らはボールを蹴りはじめた。やがて女たちも仲間に入ってきた。彼女らはそれまでサッカーをやったことがなかったはずだ。僕の世代のヨーロッパの女性はサッカーなどやらなかった。

 公園から戻って夜になっても、彼女たちはアッパーウェストサイドの舗道でボールを蹴り続け、男たちが「近所迷惑だからやめてくれ」と言ってやらないといけなかった。まるで彼女たちは、19世紀にイギリスの水夫がやって来てボールを持ち込んだとたん、サッカーのとりこになったどこかの島の住民のようだった。

 機会さえあれば、女性はサッカーをしたがる。サッカーが女性に開放されて以降(それは驚くほど最近の話だ)、女子のサッカー人口は増える一方だ。女性は男子サッカーも見るようになり、最近の国際大会のテレビ観戦者は女性が約40%を占めている。

 しかし、ひとつだけ女性も男性もやらないことがある。女子サッカーを見ることだ。まもなくドイツで始まる女子ワールドカップではチケットが売り切れた試合もあるが、それは例外だ。世界の優れた女子サッカーの試合は、ごくひっそりと行なわれている。