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マラドーナ、狂乱のナポリ時代。「神の子」の転落が秘蔵映像で明らかに

  • 桜田進ノ介●文 text by Sakurada Shinnosuke

 イタリアの港町ナポリの石畳を、けたたましいエンジン音とともに疾駆する小型車。その映像に、あどけない表情でサッカーユニフォームをまとう天然パーマの少年がカットインされる。次のシーンで車は地元のサッカークラブ、SSCナポリのホーム、スタディオ・サンパオロに到着する。時は1984年、当時23歳のディエゴ・マラドーナはここでメディカルチェックを受けた後、興奮した記者たちでごった返す大混乱の入団会見に臨む──。

 映画『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』(2月5日より全国ロードショー)はオープニングから疾走感に満ちている。この作品は、アルゼンチンが生んだ天才的なサッカープレーヤー、"神の子"と呼ばれ、波乱万丈の末に昨年急逝したディエゴ・マラドーナを描いたドキュメンタリーだ。
 
 その売りは、マラドーナをはじめ登場人物がすぐ近くにいて、息づかいまで聞こえてきそうなカメラワークにある。世には"秘蔵映像"を謳(うた)い文句にしながら、実際には公開済みの記録映像をつなぎ合わせただけというケースも少なくないが、この作品は違う。

絶頂期にはナポリを初のリーグ優勝に導き市民を狂喜させた © 2019 Scudetto Pictures Limited絶頂期にはナポリを初のリーグ優勝に導き市民を狂喜させた © 2019 Scudetto Pictures Limited

 マラドーナがプレーする様子もテレビ中継の映像ではなくピッチサイドから撮影されているし、元妻クラウディア・ビジャファーネとテニスを楽しむ場面や、マラドーナの父親が、満面の笑みを浮かべながらアルゼンチン代表のバーベキュー・パーティーで肉を焼いているシーンなど、近親者でなければ撮影できないような未公開映像で埋め尽くされている。
 
 さらに、マラドーナ本人だけでなく、ナポリ時代の同僚で後にユベントスのキャプテンも務めた元イタリア代表、チーロ・フェラーラなど多くの選手たちが映像に残されており、またコメンタリー出演して当時の回想を語っている。その意味では、80年代から90年代にかけてのサッカーシーンを記録した重要な資料だとも言えるだろう。

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