37歳を超えてなお充実の長谷部誠。「サッカー選手を超えた存在」

  • パトリック・クラインマン●文 text by Patrick Kleinmann
  • 鈴木達朗●翻訳、構成 translation by Suzuki Tatsuro

今季の長谷部誠の活躍に注目が集まっている。1月24日には、日独交流160周年の記念として、ドイツのハイコ・マース外務大臣とオンラインで対談を行なった。ドイツ人にとって長谷部は、サッカー選手の枠を超えて、まさに日本人を代表する存在だ。今回はドイツの随一のスポーツ誌『キッカー』で、フランクフルトの番記者を務めるパトリック・クラインマン氏に、長谷部誠の現状について寄稿してもらった。

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 挨拶は、友好的なものだった。長谷部誠は「こんにちは、外務大臣」と、ドイツのハイコ・マース外務大臣に言葉を送る。1月下旬に、ドイツ政治の高官とフランクフルトで活躍する日本人選手は、160年前に締結された友好条約を記念して、言葉を交わしたのだ。「ドイツと日本は、とても相性が良いと思っています」と長谷部はつづける。とりわけ、ドイツと日本は競争関係にあっても、お互いに"チーム"として補い合うことができると説明した。

ボランチ起用が多くなった今季の長谷部誠だが、プレーは充実している photo by Getty Imagesボランチ起用が多くなった今季の長谷部誠だが、プレーは充実している photo by Getty Images 公の場で外務大臣の対談相手として、ブンデスリーガの日本人選手として活躍する長谷部に、白羽の矢が立ったのだ。これはドイツ人にとって、長谷部はいちサッカー選手という枠を超え、日本を代表する"親善大使"であることを意味している。

 37歳になった長谷部は、ドイツ人の頭の中にある日本人像を体現している。礼儀正しく、信頼でき、共感できる存在。ハードワークを苦にせず、人としてもアスリートとしても、老いる様子がほとんど見られない。

 客観的に見れば、年齢的に、このフランクフルトのベテラン選手は、キャリアの晩秋に差し掛かっているはずだ。だが、長谷部のキャリアの秋は長く、終わる様子がない。長谷部とクラブが、シーズンのはじめに「今季がドイツで最後のシーズンになるかもしれない」と話し合いをするようになってから、すでに数シーズンが過ぎている。これまでのところ、この話し合いは毎回、契約延長にいたっている。

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