ジダンにはレアル向きの資質がある。強い個性をどうまとめているか (3ページ目)
監督の色を強く押し出すと、選手のプレーは制限される。チームとしての戦い方が明確になる一方で、どうプレーすべきかが決まるので選手の自由は小さくなる。チームプレーなのでそれでもいいのだが、レアルは事情が違う。
例えば、チームとしてタッチライン際からのロングクロスを蹴らないという方針があるとする。チームによってはそれがよい方針にもなるが、デイビッド・ベッカムやロベルト・カルロスにそれを適用するのは個性を削ることになる。規格外の力量を集めているのに、小さくまとめてしまうのでは意味がないのだ。
一方で、ここという時には個性の強い選手たちをまとめる力も問われる。
ジダン監督のチームには、クリスティアーノ・ロナウドがいた。ロナウドはすべての試合に出場したがったが、ジダンはローテーションどおりに休養させている。バルセロナの監督たちがリオネル・メッシに対してできなかったことだ。
特定の試合では、ロナウドにも守らせていた。いつもはそうではない。しかし、限定的に特殊な戦術や役割を選手に課すことがある。普段が緩いだけに目立つのだが、その時にはちゃんと統制できている。
「人として真っすぐ」は、デル・ボスケもそうだった。スター揃いのチームだけに、公平公正でなければならないし、選手としての能力とは別に人として尊重しなければならない。
ジダンは「好戦的でない」。争いを好まず、穏便に解決する。好戦的な選手は常にいるので、監督まで好戦的では争いの火種を撒くようなものだ。ロナウドやセルヒオ・ラモスといった勝利への情熱をたぎらせているリーダーがいれば、選手を挑発する必要もない。
バルセロナ時代のフランク・ライカールト監督とも似ていて、ジダン監督は周囲の意見を吸い上げていく。昨季、中断明けから守備戦術が目に見えて整備されていた。おそらくスタッフのアイデアを取り入れたのだと思う。現代は何もかもひとりでやれる時代ではない。テクノロジーや最新の知見を採り入れていく度量が、現代の監督には要求されている。
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