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名将なのに賛否両論あるファン・ハール。指導力が高すぎて失ったもの (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

 ファン・ハールが理想のオランダ的なスタイルを追求すればするほど、クライフから見れば「そうじゃない。全然違う」ということだらけだったのではないか。

 ファン・ハールは指導力に定評があった。どういうサッカーをすべきか、そのために個々がどうプレーすべきか、事細かく丁寧に指導していく。理想に向かって邁進するので妥協はない。

 ファン・ハールが最初で最大の成功を収めたアヤックスは、彼の理想を体現する選手たちで固められていた。とくに無敗でリーグを制し、チャンピオンズリーグも優勝した1994-95シーズンのアヤックスは、まるでウイニング・マシーン。有無を言わさず攻めまくり、勝ちまくった。

 バルセロナでもオランダ人選手を大量補強し、"アヤックス・カタルーニャ"と揶揄され、批判もされたが、リーガ・エスパニョーラを連覇している。ただ、バルサではエースのリバウド(ブラジル)との確執があり、3シーズン目に失速して解任された。その後、再度バルサを率いているが、フアン・ロマン・リケルメ(アルゼンチン)と合わず12位と不振を極めて、1シーズンもたずに退任している。

 自分のお気に入りの選手を並べ、自らの理想どおりにプレーさせた時のファン・ハールのチームは、恐ろしく強い。半面、自分に従わない選手がいる時は失速する。相容れない選手は容赦なく放出するのだが、看板スターの場合はそうもいかない。不思議なのは、00-02年にオランダ代表を率いた時に、予選敗退で本大会出場を逃していることだ。

 ファン・ハール方式を理解しているはずの、オランダ人で編成された代表チームで、なぜ失敗してしまったのか。簡単に言うと、この時のオランダは出来上がりすぎていた。ある意味、ファン・ハール特有の失敗で、それはおそらく、たとえばクライフ監督のチームなら起こらない現象だったのではないかと思う。

<出来上がりすぎて失敗する>

「誰でもボールに触りたいものだ。子どももプロもそれは同じ。ボールをプレーすることに喜びがある。だから選手は15メートルの幅でプレーすればいい。全員がプレーに参加するにはそれが適しているからだ」(クライフ)

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