名将なのに賛否両論あるファン・ハール。指導力が高すぎて失ったもの (4ページ目)
ポゼッションとポジション、この2つはオランダサッカーのベースだ。では、なぜそうなのか。よいプレーをするため、試合に勝つためなのだが、クライフはプレーする喜びのためだとも言っている。
オランダ人が信じている"本当のサッカー"への情熱において、ファン・ハールはクライフに負けていない。ただ、ファン・ハールはやりすぎてしまうのだ。その結果、いつしかプレーする喜びはどこかへ置き去りにされ、選手は理想を実現するための部品のようになり、チームも機械になっていく。
最初のオランダ代表での失敗は、出来上がりすぎているがゆえに、プレーが単調に陥ったことが大きい。ファン・ハール流が浸透するとパスは回る。ボールは支配できる。規則的にボールはサイドへ行き着き、そこからクロスボールが大量生産されるのだが、それがあまりに繰り返されると対戦相手が守り慣れてくるのだ。
ところが、出来上がりすぎているがゆえに、同じ攻撃を繰り返してしまう。
二度目のオランダ代表を率いた時は、ブラジルW杯で3位。オランダ方式から逸脱したカウンターのスタイルで勝ち上がった。
ファン・ハールには、クライフにない戦術の引き出しがあった。AZをオランダ王者にできたのもそれゆえだ。ただ、ファン・ハールにとっては理想的なチームではなかったはずだ。
ルイス・ファン・ハール
Louis Van Gaal/1951年8月8日生まれ。オランダ・アムステルダム出身。選手時代はMFでプレー。監督しては91年から率いたアヤックスでリーグ3連覇、チャンピオンズリーグ優勝など、チームの黄金期をつくる。その後、バルセロナやAZ、バイエルン、マンチェスター・ユナイテッドなどの監督を務めた。オランダ代表も2度率い、14年ブラジルW杯で3位の成績を収めている
4 / 4