名伯楽が整えた伝統のイタリア式戦術。勝ちまくった要因を探る (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 1984-85シーズン、チャンピオンズカップに優勝したユベントスは、トラパットーニ監督らしいチームだった。

 リベロにガエタノ・シレア。冷静なカバーリングだけでなく、ビルドアップ能力も優れたイタリアを代表するリベロである。ふたりのセンターバック(CB)はマンマーク要員で、ルチアーノ・ファベロとセルジオ・ブリオ。そして左サイドバック(SB)にアントニオ・カブリーニ。DFは4人だが、並び方が変則的なのが特徴である。右SBがいないのだ。

 ファベロとブリオの2ストッパー(CB)は、相手の2トップを厳重にマークする。左はカブリーニが普通にSBとして固定されているが、右サイドは主にMFのマッシモ・ボニーニがカバーする。攻撃の時はファベロが右SBの位置に出るが、守備ではマンマークして中央に絞るのに連動してボニーニが引いてくる。

 この右側だけが時計回りに引いてくるシステムはややこしい感じもするが、イタリアではこれが一般的で、代表チームも長年このやり方だった。

 MFはボニーニが右サイド兼任のゾーン。マルコ・タルデリが攻撃をサポートしつつ、相手のプレーメーカーをマークする。つまり、守備要員はリベロ、2ストッパ-、左SB、ふたりのMFの計6人だ。このうち左SBカブリーニとMFふたりは適宜に攻撃に参加するが、基本的に6人は守備の人である。

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