2020.07.03

万能型FWベンゼマはダイエット成功で
「ジダン+ロナウド」に進化した

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

サッカースターの技術・戦術解剖
第15回 カリム・ベンゼマ

<ロナウドの突破力+ジダンのテクニック>

 カリム・ベンゼマは9歳からリヨンの育成組織でプレーし、トップチームの試合ではボールボーイをしていた。17歳の時にトップチームでデビューすると、3シーズンで主力となり、20歳でリーグアンの得点王を獲った。当時のリヨンは黄金時代で、ベンゼマは6~7連覇のエースとして活躍している。

32歳になったベンゼマ。万能型の選手として今後はどんなスタイルを見せるのだろうか 187cmと体格に恵まれ、パワフルだがスピードもすばらしく、テクニックについてはアレックス・ファーガソン(当時のマンチェスター・ユナイテッド監督)が「(ジネディーヌ・)ジダンと似ている」と評していた。

 ベンゼマの憧れの選手は、ブラジルの”フェノメノ”、ロナウドだった。ロナウドのプレーをよくマネしていたというが、ハーフウェイラインぐらいからひとりでドリブルしてゴールしてしまう究極のソロプレーは、リヨン時代のトレードマークだった。これは現在のレアル・マドリードではあまり見られなくなったプレーである。

 ドリブルでゴールへ迫っていく単独プレーは”ラッシュ”とも呼ばれる。リオネル・メッシは現代サッカーでラッシュを許されている稀少な選手だが、かつてはスーパースターたちの代名詞のようなものだった。ペレやディエゴ・マラドーナは相手を次々に抜き去ってゴールを重ねていたし、ヨハン・クライフも時折そうしたプレーを見せていたものだ。ベンゼマが憧れたロナウドは、これの最高峰と言えるかもしれない。

 ベンゼマがラッシュを封印した理由はわからない。やらなくなったのか、できなくなったのかは不明だが、レアル・マドリードでのベンゼマは「ロナウド」から「ジダン」へ少し寄っていく。クリスティアーノ・ロナウドのためにスペースをつくり、ボールを渡す役割にシフトしたのだ。9番としての完璧な資質に恵まれながら、フランスでよく言う「9.5番」になっていった。