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名伯楽が整えた伝統のイタリア式戦術。
勝ちまくった要因を探る (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

 ユベントスのあともインテルを率いてセリエA優勝、ドイツ、ポルトガル、オーストリアでもリーグ優勝。異なる4カ国でリーグ優勝した監督は、エルンスト・ハッペル(オーストリア)、トミスラフ・イビッチ(クロアチア)、カルロ・アンチェロッティ(イタリア)、ジョゼ・モウリーニョ(ポルトガル)とトラパットーニの5人だけ。UEFAの3大カップを制覇したのは、トラパットーニのほかにウド・ラテック(ドイツ)がいるだけだ。

 40年にわたる長いキャリアのどこに焦点を当てるべきか難しいが、やはりもっとも多くのタイトルを獲ったユベントス時代になるだろう。

<ジョコ・アリタリアーナ>

 トラパットーニ監督はイタリアの伝統を踏まえたスタイルから、ジョコ・アリタリアーナ(イタリア式のゲーム)と呼ばれていた。

 自身が選手としてプレーしたミランの、ネレオ・ロッコ監督からの影響が強いようだ。ロッコはカテナチオを代表する監督のひとりだった。相手のアタッカーを漏れなくマンマークし、リベロがその背後をカバーする厳重な守備。攻撃は縦に速く、カウンターアタックを狙う。ミランでは司令塔としてジャンニ・リベラがいて、リベラのパスで3トップを走らせてゴールへ迫っていた。攻守のバランスは守備が5~6人、攻撃が4~5人という分業制である。

 トラパットーニはさまざまなシステムを駆使し、戦術も時代に合わせて変化しているが、守備重視、マンマーク、縦に速いカウンターというところはロッコ監督を踏襲している。

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