塩谷司を変えた母親と恩師の言葉
「あの日から、あきらめなくなった」 (5ページ目)
だから、葬儀が終わってひと段落すると、母親にこう切り出した。
「俺、大学やめて、こっちで働くよ」
だが、母親は首を縦には振らなかった。
「そんなにすぐ、将来のことを決めなくてもいいんじゃない。道を探せば、大学を卒業する方法も見つかるかもしれないんだから」
サッカー部の細田三二監督にも電話し、大学をやめて地元で働こうと考えていると伝えた。ただ、母親と同じく、恩師はうなずかなかった。
「授業料のことも含めて、可能なかぎり工面できるように働きかけてみるから、卒業するまでがんばったらどうだって言ってくれたんですよね。せっかく半分以上通った大学なんだから、卒業しようって。その時、試合にも出ていない選手のために、そこまでしてくれるのかって思ったんです」
心が揺さぶられたというよりも、心が震えた。
母親にそのことを話し、「俺、もうちょっとがんばってみたい」と告げると、「こっちでできることはするから」と、再び背中を押してくれた。
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