失ってわかるスポーツの意味。試合がなくなりメンタルヘルスに影響も
【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】
スポーツのない日常(前編)>>後編を読む
アメリカの作家ハンター・S・トンプソンは、2005年2月に銃で自殺した。その4日前、彼は黒いサインペンで遺書をしたためていた。
映画化もされた『ラスベガスをやっつけろ』をはじめ、独自の手法によるノンフィクションで知られた彼は、遺書にもタイトルをつけていた。「フットボールシーズンは終わった」と、そこにはあった(このフットボールとはアメリカンフットボールのことだ)。
「ゲームは終わった」と、トンプソンは書いていた。「驚くことは何もなくなった。歩くこともない。楽しいこともない。泳ぐことだってない。俺は67歳。50歳から17年過ぎた。必要だった時間、望んでいた時間より17年余計だった。まったくくだらん」
鹿島アントラーズの本拠地、カシマスタジアムではPCR検査が始まった photo by AFLO 今、すべての人にとってフットボールシーズンは終わってしまった。新型コロナウイルスの感染爆発により、世界中のスポーツが停止している。これが人々のメンタルヘルスにとって最大のリスクのひとつになっているとは、考えにくいかもしれない。
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