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「東欧のマラドーナ」は技の宝庫。
ハジの芸術的パスと伝説のゴール (5ページ目)

  • 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 スウェーデンに敗れた翌日。タクシーに荷物を詰め込む彼らがいた。私を見つけるなり、こう言って握手を求めてきた。

「ルーマニアは強いだろう。ハジはすごいだろう。胸を張って帰れるよ」

 アメリカW杯のルーマニア代表の総得点は10点。ハジは3得点4アシスト。ほとんどのチャンスは彼の左足から生まれていた。ヒールキック、股抜き、ルーレットなど、ボールを持ったら何をするかわからない。そんなスリリングなプレーが見る者を魅了した。大会後にはFIFAが選ぶベストイレブンにも選ばれている。それは"東欧のマラドーナ"から"世界のハジ"になった証拠だ。ルーマニア国内では「ハジを大統領に」という声が上がったほどだ。

 大会終了後にはバルセロナに移籍。ヨハン・クライフのもと、フリスト・ストイチコフやロマーリオとともに"ドリームチーム"の一員となった。

 ルーマニア代表は1998年のフランス大会を最後にワールドカップに出場していない。ハジはルーマニアサッカー界の最高傑作だった。

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