エラシコ、ヒールリフト、ダブルタッチ。各フェイントの王様は? (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by AFLO

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 ブラジルの後輩たちがかなりうまいのだ。まず"フェノメノ"ロナウド(94年アメリカW杯メンバー、98年、02年、06年W杯で活躍)がすばらしかった。速かったし、リベリーノよりかなり大柄ということもあって、ボールの動く幅が違う。豪快なエラシコだった。さらに上を行く感じだったのがロナウジーニョ(02年、06年W杯で活躍)だ。ナイキのコマーシャルで有名になったが、アウトのワンタッチ目が浮いていた。ムチがしなるようなエラシコで、優勝はロナウジーニョとしたい。

<ネイマールに引き継がれたヒールリフト>

 相手の頭越しに浮かせて抜く「シャペウ」。こちらも名手はブラジル人が多い。代表的なのは1958年W杯決勝のペレだ。当時17歳、浮き球をコントロールしてDFをひとり外し、次に突っ込んできた相手をシャペウで抜いてボレーシュート。サッカー史に残る名場面のひとつである。

 この58年大会のMVPだったジジは、特殊なシャペウを得意としていた。カカトでボールを跳ね上げて背中越しに浮かせるプレー。このヒールリフトは、たぶんサッカーを始めたころに誰もが挑戦したであろう技だが、「ジジのフェイント」とも呼ばれていたそうだ。ジジは「フォーリャ・セッカ」(=枯れ葉)と呼ばれた壁を越して落とすFKの名手としても知られていた。

 ただ、ジジによるジジのフェイントは古い映像を探したが確認できなかった。曲芸的な技なので使う人はさすがに少ないが、現在でもネイマールは頻繁にこれをやっている。

 コーナーフラッグ付近で相手に背を向けた状態から、振り向きざまにアウトサイドですくって頭上を抜く技もある。何と呼ぶのかは不明なのだが、アルフレッド・ディ・ステファノが使っていた映像は確認できた。日本では木村和司とラモス瑠偉が使っていたのを見たことがある。

 浮いているボールからシャペウへの移行はよくあるが、地面にあるボールをすくい上げるのは難度が高い。シャペウ部門はヒールリフトを現代に蘇らせたネイマールの優勝としたい。

※アルレッド・ディ・ステファノ
レアル・マドリードの欧州チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)創設(1955-56シーズン)からの5連覇に貢献した名プレーヤー。アルゼンチン、コロンビア、スペイン代表でプレー

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