バルサ新プロジェクトの全貌を独占取材。「サッカーの未来」とは? (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ハブの16人のスタッフは、バルサのあらゆる関係者と接触し、最高の「革新」をクラブ中にもたらそうとしている。しかもハブの機能は、クラブ内だけにとどまるものではない。「私たちには、世界でも最高の『実験室』がある」と、バルトメウは言う。「なんといっても、このクラブにはさまざまなスポーツをやっている8~30歳の男女が2500人いるのだから」

 バルサではフットボールだけでなく、バスケットボールからローラーホッケーに至る多くのスポーツで、それぞれ男子、女子、子どものチームを設けている。バルサと提携する新興企業や大学は、自分たちの研究や発見を、これらのアスリートに試してもらうことができる。

 ときにはバルサのスタッフが製品開発を手伝うこともある。こうした試みが画期的な結果につながれば(たとえばハムストリングのケガを早く回復させる方法を見つけるなど)、まずバルサのアスリートたちが最初に恩恵を受ける。

 その後に、クラブは新製品を世界中のスポーツに広めたいと考えている。こうした社会貢献をめざす姿勢は、バルサが掲げる「クラブを越えた存在」(MES QUE UN CLUB:カタルーニャ語)というモットーから来るものでもあるし、少なからず収益増を期待しているためでもある。

 どこかの企業が「FCバルセロナでテスト済み」と銘打った製品を売り出せば、バルサはロイヤリティを得られる。これらの製品が睡眠や栄養に関するものなら、一流アスリートにも一般の人にも同様の需要があるから、利益はさらに大きくなる可能性がある。

 現在バルサには、投資ファンドを立ち上げる計画がある。当面の資金調達目標額は1億2500万ユーロ(約157億円)。スポーツとテクノロジーに関する世界中のプロジェクトから投資先を見つけたい意向だ。

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