バルサ監督が語るデータ活用術。
「メッシに伝えること、任せること」

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】バルセロナと「未来のフットボール」(2)

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 FCバルセロナの目標は、ただ勝つことだけではない。医学や栄養学、データ分析、バーチャルリアリティ(VR)など、さまざまな分野の研究を通じて、フットボールの進化をめざしている。バルサのめざす「未来のフットボール」を探るシリーズの第2回は、監督のエルネスト・バルベルデに、勝利を義務づけられたクラブを率いることの意味を聞くとともに、フットボールの世界で広く行き渡りはじめたマッチデータをバルサがいかに活用しているかを追う。

【監督】

 小柄で、やせぎすで、笑顔を絶やさないエルネスト・バルベルデは、ビッグクラブの監督としては線が細いように思えなくもない。現役時代はスター選手ではなかったし、指導者のキャリアも中堅クラブで築いた。そして2017年、53歳のときにアスレティック・ビルバオからバルサにやって来た。

 いま彼のオフィスは、バルサのトップチームのトレーニング場を見渡せる場所にある。トレーニング場の名は「カンプ・ティト・ビラノバ」。2015年に耳下腺がんのため45歳の若さで死去したバルサの元監督ティト・ビラノバの名にちなんでいる。

試合中、セルヒオ・ブスケツに指示を与えるエルネスト・バルベルデ監督 photo by Getty Images試合中、セルヒオ・ブスケツに指示を与えるエルネスト・バルベルデ監督 photo by Getty Images バルベルデのオフィスの壁は殺風景で、トップチームのスケジュール表が貼られているくらいだ。彼自身の色のようなものは、ほとんど感じられない。地元の人々が支え、キャリアを通じて在籍し続ける選手も多いクラブでは、トップチームの監督はただの「通りすがり」でしかないことを、バルベルデは理解している。

 僕がインタビューしてから2日後、バルベルデは2020年まで契約を更新した。だが、そんなものは、彼が何試合かに敗れれば、ほとんど意味がなくなる。

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