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ムバッペは「W杯優勝の呪い」を
乗り越える。「大事なのは次の試合だ」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 しかし、ワールドカップ・ロシア大会の決勝から2カ月ちょっとしか過ぎていないというのに、ムバッペは「ワールドカップ優勝の呪い」を乗り越えるだけの可能性を十分に見せている。

 僕たちはまだムバッペのことを知り始めたばかりだ。だからワールドカップ期間中のフランス代表に密着したテレビドキュメンタリーは、とても助けになる。フランスのテレビ局TF1が制作した番組で、ワールドカップ決勝の数日後に放映された。

 このドキュメンタリーにムバッペは、しっかりしていて人気のある選手として登場する。チームメイトたちは、彼の年齢のことをからかって楽しんでいる。

「こいつ、すごいな。こんなことまでできちゃうんだから。まだ15歳だっていうのに!(笑)」

 初戦のオーストラリア戦に2-1で幸運な勝利を収めた後のシーンでは、監督のデシャンが怒りまくっている。「おい、笑っている場合じゃないぞ!」。彼は選手たちに、ハイインテンシティー(高強度)な走りが少なすぎると言う。
 
 それからデシャンはムバッペに向かって、こう言う。「キリアン、君が最低だ。3%だぞ」。この試合でのムバッペの走りのうち、ハイインテンシティーなものは3%しかなかったという意味だ。

 このシーンは、最近のロッカールームで統計が驚くほど多用されていることを示している。だが同時に、ムバッペを知るヒントも与えてくれる。

 まだ10代の彼は、ワールドカップ最初の試合で振るわず、チームメイトの前で監督に恥をかかされた。けれどもその後に、いつもの落ち着いた口調で、カメラに向かってこう語るのだ。

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