W杯で話題になったVARはサッカーのトレンドをどう変えるのか? (4ページ目)

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中山 戻れないと思います。ただ、運用方法という部分については、さっき小澤さんも触れましたけれども、まだみんなが慣れてないということ。見る人もそうですけど、あとは、VAR担当、それからレフェリー、それから選手、監督、この辺がまだそこに慣れてないというか、実際初めて運用してみて「エッ、こういうことがあるの?」「こういうことがあったの?」という初めてわかったこともいくつかあったので、その運用でいうと、『レキップ』も触れていますが、最終的に人間の解釈によって、VARをそこで採用するのか採用しないのかが決まってくる。

倉敷 たとえば、決勝戦で、アルゼンチン人レフェリーが何度もVARを確認して、結局PKを取りましたよね。あそこの解釈というのは、是非が分かれるところだと思うんです。みんなが同じものを見ていて、これはPKか、否か、最終的に人間が判断するのであれば、同じVTRを見ていたとしても、異なる解釈についてまた議論にはなる。どうなんでしょうね。操作もある程度可能になるし、このワールドカップにはVARを使うシーンと使わないシーンが混在したじゃないですか。ここは今後に向けてはっきりさせておくべきですね。

中山 当然VARがなければあのハンドはなかったと思いますし、レフェリーも見えていなかった。ただ、そこでマッシミリアーノ・イラッティ、イタリア人のVAR担当が、「今のはハンドかもしれない」という提案が、無線で入ったと思うんです。でも、その時点でレフェリーが「いや、大丈夫だ」と。

 もしレフェリーが判断するという当初のルールがそのまま採用されていればそう言えばよかったんですが、「じゃあ確認します」となったところでモニターを見たら、人間の視覚の問題、それから心理の問題からすると、明らかに手に当たっていると。それが、たとえば動きからしてこれはハンドに値するかどうか。主審が、あそこでこれは値しないと判断するのは難しいと思うんです。何億人の人がもう見てしまったとしたら、ここはハンドとしておかないと、これは明らかに目で見えていたので、という判断になってしまう。

倉敷 なるほど。小澤さんにも伺おうと思います。小澤さん、VARに関してはいかがでしょうか。

小澤 僕自身も中山さんと同じような意見ですけれども、VAR自体の導入は前提としては賛成です。これだけのテクノロジーがあって、主審が見きれないプレー、それから、サッカー自体がスピーディーになっていますし、とくにオフサイドギリギリのプレーなどはなかなか見きれないと思います。そういう意味では、主審、レフェリーをサポートするテクノロジーの導入には賛成です。

 今回明らかになったのは、最終的には主審がVARのジャッジをやるかどうかを自分が決めるというところで、主審にイニシアチブを持たせている部分が少し疑問を呼ぶような判定が結局は起こりました。

 テニスやバレーボールでやっているような、両チームに、前後半なのか1試合なのかわかりませんけれども、チャレンジ権というようなかたちで、チームとして「きちんとこれは見てくれ」という権利を与えて、そういうかたちでの運用をしたほうがいいのかなと、今大会を通じて僕は見ていました。

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