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タイの大富豪が岡崎慎司も所属の
レスターを買収して手にした「保険」 (3ページ目)

  • ジェームス・モンターギュ●取材・文 text by James Montague
  • 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 ヴィチャイはレスターの本拠地、キング・パワー・スタジアムに自家用ヘリコプターで登場し、センターサークルに降り立つことを誇りにしているようにも映る。しかし、彼が本当に手にしたかったのは、まったく違うものなのかもしれない。

 ヴィチャイの財産と成功は、タクシンとの強い結びつきのもとに築かれた。そのため、2006年に軍のクーデターによってタクシンが失脚すると、彼の身にも危険が及びそうになった。そこで機転を利かせたヴィチャイは、良好な関係を維持していた王室に助けを求め、軍の上層部をなだめてもらったのである。

 実際に、クーデターを成功させた軍事政権は、キングパワーの免税店の権益を失効させようとした。当然ながら軍部にも大きなビジネスを目論む人々がおり、年間4億ドルの売り上げを計上するスワンナプーム国際空港の権利をヴィチャイが独占していたことを、快く思っていない人も多かったのである。

 長い法廷闘争の末、最終的にヴィチャイは権利を守ることができた。しかし、その裁判と政治的な暗躍に多額の費用が使われたと見られている。

「タイでビジネスに乗り出したいのなら、しかるべき人々と話をしなければならない。それは軍部とのパイプを持つビジネスマンだ」と話すのは、東南アジアの事情に詳しい政治学者のポール・チャンバース博士だ。

「キングパワーはその力を維持できた。軍事政権はキングパワーの独占を解こうとしたが、ヴィチャイには大きな影響力を持つ友人がいたのだ」

 ヴィチャイは長年、タイ国民から熱烈に愛された王、故ラーマ9世の周辺で慈善事業に勤しんだ。そこで費やした労力の見返りとして、2013年にスリヴァッダナプラバの名字を授けられた(それまでの名字はラクスリアクソン)のである。この名字には「進歩的な栄光の光」という意味がある。

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