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タイの大富豪が岡崎慎司も所属の
レスターを買収して手にした「保険」 (2ページ目)

  • ジェームス・モンターギュ●取材・文 text by James Montague
  • 井川洋一●訳 translation by Yoichi Igawa

 そんなタイ屈指の資産家は、ポロ(馬に乗って行なうホッケーのような競技)を愛好し、世界中の王家とのつながりを持っている。1989年にバンコクで小売業を始め、その後、空港の高価な免税店の出店の権利を得たことで、会社は莫大な利益を上げるようになり、彼の個人資産は40億ドルに達した。

 なかでも群を抜く利益を計上したのが、バンコクのスワンナプーム国際空港の免税店だ。この空港は2006年、時の首相タクシン・チナワットが巨額を投資して建造したものである。

 ヴィチャイとタクシンは盟友だった。どちらもタイの華僑系エリート一家の出身で、1990年代のタイの急激な経済成長のさなかに莫大な富を得た。そして2人とも、イングランドのフットボールクラブに投資――タクシンはマンチェスター・シティを2006年から1年間だけ所有――していた。

 ヴィチャイの所有するキングパワーは、2010年にレスターと3年間のスポンサー契約を結び、シャツの前面に会社名がプリントされた。しかしそれだけにとどまらず、クラブを全面的に買収したのだ。

 彼がレスターを買収したとき、クラブは前年にイングランドの3部リーグから2部に昇格したところだった。2011年にはオーナー兼会長となり、息子のアヤワットが副会長を務め、監督にナイジェル・ピアソン(現ベルギー2部のOHルーヴェン監督)を据えて2014年にプレミアリーグ昇格を果たした。

 ところが2015年6月、ヴィチャイはピアソンを解任する。タイで行なわれていたトレーニングキャンプ中に、ピアソンの息子を含むリザーブチームの選手たちが、現地の女性たちと乱痴気騒ぎに及んだことが原因だった。

 後任監督としてラニエリを招聘すると、そのシーズンにバーディーは11試合連続得点を含む13ゴールを記録し、チームは夢のプレミア制覇を果たした。ヴィチャイが定期的に呼び寄せていた僧侶が選手たちに説いたという神聖な教えに、どのくらいの効果があったかかは定かではないけれども。

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