あのベッカムが「話せる男」に変身。そのスピーチで聴衆をメロメロに (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 ユナイテッドに入ったベッカムは、ユースチームのコーチであるエリック・ハリソンが父親と同じくらい厳しいことがわかって、うれしかった。トップチームの監督アレックス・ファーガソンも非常に厳しかった。

「私はトッテナムから6年契約のオファーをもらっていましたが、マンチェスター・ユナイテッドからのオファーは2年間でした。その2年のうちにトレーニングに励んで結果を出さなければ、次の2年はないとわかっていました」

 あるときファーガソンがベッカムを監督室に呼び、「レンタル移籍でプレストンに行ってほしい」と告げた。ベッカムはそのときのことを振り返る。

「これでマンチェスター・ユナイテッドでのキャリアは終わりだと思いました。下部リーグに4週間追い出されました。選手として、あれほど印象深い時期もあまりありません。でも監督(ファーガソン)は、ある木曜日に私を呼び戻してくれました。土曜日にはマンチェスター・ユナイテッドでデビューを果たしていたと思います」

 ファーガソンの強権的なリーダーシップは、従順なベッカムにぴったりだった。「いいプレーをできなかったら、フィールドの出口のいちばん手前でアレックス・ファーガソンが待っていると、みんな知っていました。怖かったですが、価値ある怖さでした」

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