レアル今夏の補強はゼロ。全権掌握ジダンのマネジメント術が光る (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 アノエタでのレアル・ソシエダ戦(8月21日)から始まる新シーズン、ジダン率いるチームの戦い方は昨シーズンと大きな変更はない。BBC(カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの3トップ)を軸とした速攻のスタイルがベースになることは間違いない。

「自分のアイデアを浸透させ、攻撃的かつ魅力的なサッカーを見せたい」

 監督就任時の所信表明でそう語っていたジダンだが、昨シーズンの戦い方を見ると、それは勝利を手にするための手堅いサッカーだった。レアル・マドリードの監督は結果だけでなく内容も求められる難しいポストである。過去にはファビオ・カペッロが、タイトルを獲得しながら「サッカーがつまらない」という理由で解任されたことがあった。

 だが今、フランス人監督に対してそのような批判は何ひとつ聞こえてこない。

 もちろん、それはサッカー史に残る偉大な選手であったことからクラブ、選手、サポーター、そしてメディアからリスペクトを勝ち得ていることが一番の要因だろう。だがそれだけでなく、ジダンの一個人としての実直な性格によるところも大きい。

 記者会見などで感じるジダンの印象はまじめでおおらか。その口から紡ぎ出される言葉には"トゲ"や"圧力"といった敵を作るようなトーンのものはひとつもない。現役時代はそのプレーで人々を魅了していたフランス人は、監督としてその優しい視線と言葉で相手を魅了する。どうやら"人たらし"としてのカリスマ性を秘めているようで、敵がいない状況を自然に作り出している。

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