フランス熱狂への波が始まるか。ユーロ開幕戦はパイエが開催国を救う

  • 浅田真樹●取材・文text by Asada Masaki photo by Hara Masashi

 この時期のパリは、たいてい観光客でにぎわっている。ましてユーロというビッグイベントが開かれているとなれば、なおさらだ。スタジアム周辺でなくとも、街のあちこちから各国サポーターの騒ぎ声が聞こえてきていいはずだ。

 しかし、今年は少しばかり勝手が違う。空港やターミナル駅にいても、そうした人たちの姿を見かけることが何となく少なく感じる。

 昨年起きた同時多発テロの影響が、やはり小さくないのだろう。パリの街はどこか閑散としている。浮かれ気分の観光客と思しき人たちは少なく、目にするのはいつもの生活を送る地元住民ばかり、といった感じだ。

 そんな寂しげな街の印象が反映されたわけではないのだろうが、ユーロ2016の開幕戦もまた、率直に言って退屈な、睡魔との戦いを強いられるような試合となった。

 地元フランスがルーマニアを迎えた、ユーロ開幕を告げる晴れの一戦は、2-1と互いに点を取り合った。最後は大声援を背にするフランスが、終了間際のゴールで勝利するという劇的な展開にもなった。だが、その内容はというと、どちらもいまひとつリズムに乗れず、攻撃のテンポがいつまでたっても上がらなかった。

 特にフランスは開催国のプレッシャーからか、プレーに余裕がなく、細かなミスが目立ち、あたふたとした攻撃を繰り返した。FWアントワーヌ・グリーズマンは動きにキレがなく、MFブレイズ・マテュイディ、ポール・ポグバも前への推進力になれない。本来、攻撃の中心となるべきタレントの存在もまったくと言っていいほど目立たなかった。

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