2016.01.03

隠居状態の名将ヒディンクがモウリーニョの後任を引き受けた理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper  森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】ヒディンクが名将と言われる理由(前編)

 2012年1月、僕はフース・ヒディンクに会うためにアムステルダムに行った。このオランダ人監督は、当時65歳になったところ。ヨーロッパでは老後を迎える年齢であり、もう監督の仕事を本格的にやる気はないようだった。

チェルシーの暫定監督に就任したフース・ヒディンク(photo by Getty Images) そこで、ヒディンクと僕はテレビのシリーズ番組を一緒に作ろうとしていた。アムステル川の美しい景色に臨むテレビプロデューサーのオフィス(ヒディンクの家から、ちょっと下ったところにある)で、僕たちはお茶を飲みながら打ち合わせをした。ヒディンクと僕は世界中を旅して、彼の古い友人や昔の仕事仲間、ジョゼ・モウリーニョやアレックス・ファーガソンといった人たちにインタビューすることになっていた。僕が質問を考え、ヒディンクが話をする。

 企画は順調に進むように思えた。ヒディンクはギャラなんてどうでもいいと言っていたし、番組は絶対に実現するはずだった。というのも、ヒディンクにはフルタイムの仕事をするつもりがなかったからだ。ロシアリーグのアンジ・マハチカラからオファーがあったばかりだったが、ヒディンクは気乗りしない様子だった。