バイエルンに完敗。武藤嘉紀がこの一戦で手にしたもの (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by Getty Images

 一方、マインツには健闘を称え合うムードがあった。ロッカールームに戻る前には、ベンチ脇の通路にいったん11人が集合して、同時にロッカールームに入るのだが、指揮官も選手たちも、疲れてはいるがどこか満足げな様子で、穏やかにロッカーに消えた。だが、満足するには少し早かった。

 後半になるとバイエルンはギアを入れ換えた。51分にはレバンドフスキが右クロスを頭で合わせ先制。その8分後にはまたもレバンドフスキが追加点をあげた。前半のPK失敗など、試合には関係なかった。0-0の前半をどう捉えるか。両チームの捉え方の差が、後半に如実に出たというわけだ。

 武藤に関していえば、完全に1トップでの定位置を確保したと言っていい。この日もフル出場し、特に前線からの追い込みで存在感を発揮した。「中距離のスピードも速い」とシュミット監督が言うとおり、攻撃でのゴール前での爆発力だけでなく、プレスのスピードも速く、しかも試合終盤までスピードが落ちないから、相手にとっては相当イヤなはずだ。

 ただこの日のように、自身もチームも救う本当に決定的なチャンスを決めることが、1トップとして最大の仕事であるのも確かだ。

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