会長続投で証明。「バルサの父」クライフの影響力低下
【サイモン・クーパーのフットボールオンライン】ヨハン・クライフの落日(前編)
今のヨハン・クライフは、静かな老後を送っているようにみえる。68歳になり、孫もいる。毎日決まった仕事もないから、メールも使わず、携帯電話も持たない。
ふだんは、バルセロナにある邸宅とアムステルダムのセカンドハウスを行き来して過ごしている。アムステルダムの人たちは、「ヨハン」が自転車に乗っていたとか、どこそこの店でフライ料理を食べていたと噂するのが好きだ。
1996年にバルセロナの監督を解任されて以来、クライフはフルタイムの仕事に就いていない。仕事が欲しいとも思っていない。それでもクライフは影響力だけは持ちたがる。アヤックスとバルセロナというふたつのクラブの精神的な「父」ともいえるクライフは、今も両クラブに静かな影響力を及ぼしている。
アヤックスは今、クライフがクーデターのような形で送り込んだ元オランダ代表選手たちが中心になって動かしている。バルセロナでは先日の会長選に、彼の盟友である元会長のジョアン・ラポルタが再出馬した。
バルセロナの会長選後、記者に囲まれるヨハン・クライフ(photo by Getty Images) しかしカタルーニャでもオランダでも、クライフの影響力には陰りが見えている。アヤックスでは内紛が始まり、バルセロナではラポルタが前会長のジョゼップ・マリア・バルトメウに敗れた。モダンフットボールの生みの親は、世界で繰り広げられているモダンフットボールを、大邸宅のテレビで見続けるだけになるのかもしれない。
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