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歓喜のフランス、W杯出場権を獲るまでの5時間 (2ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei
  • photo by GettyImages

 それでもスタジアムには入場を待つファンたちが列を作っていた。テンションも少しずつ高まってきている。入場が始まるタイミングでフランス出身のエレクトロ・ユニット「ダフト・パンク」のヒット曲『ゲット・ラッキー』が流れ、人々がメロディーを口ずさむ。そして彼らは見事にその幸運をつかんでみせた。
 
 後がないフランスは立ち上がりから総攻撃を仕掛けた。3分にヴァルヴィエナがシュートを放つなどウクライナゴールを脅かし始め、スタンドは早くも総立ちになった。この試合でフランスのアクセントになっていたのはヴァルヴィエナだろう。右の攻撃的MFのポジションで、鋭い動きによって攻撃のスイッチを入れ続けた。

 その後もヴァルヴィエナのセットプレイから立て続けに決定機を作ると、22分に待望の先制点を奪う。セットプレイの跳ね返りをリベリーがシュート。一度はセーブされるものの、こぼれ球をDFのサコが押し込んだ。

 早い時間に得点を奪ったことでフランスはさらに勢いづいた。前線に人数を掛けたことで後ろは手薄になったが、カウンターの芽は守備陣が勇気を持って早めに潰し、さらなる波状攻撃へと繋げた。フランスのベクトルは前にしか向いていなかった。フランスは34分にベンゼマが追加点をあげ、2戦のトータルスコアをイーブンにした。

 状況が振り出しに戻ると、失点が命取りになるフランスは慎重になり始めた。しかし、それもわずかな時間しか続かなかった。後半開始早々、ウクライナが退場者を出したことで、フランスが追加点をあげるのは時間の問題になってしまった。

 そして72分、ゴール前の混戦から、最後はサコが蹴り込み、フランスがついに逆転に成功する。ホームの大声援を受けたフランスの気迫は凄まじいものがあった。事実、この日フランスが奪った3点は、いずれもこぼれ球を押し込んだものだった。

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