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W杯出場に沸くイングランド。背中押すサポーターに予選の真髄を見た (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 それまでの流れを踏まえれば、この1点で十分のように思えた。しかしサッカーには別の流れもある。前半終了間際、ポーランドは、4-2-3-1の3の左を務めるソボタがゴールを決めたもののオフサイドの判定を取られる。しかし、それは微妙なタイミングで、イングランドを再び緊張の世界へと誘う引き金になった。

 後半はその流れで始まった。60分のポーランド。後半から投入されたMFクリチのパスを受けたレバンドフスキーが、中央を抜け出しシュート。GKハートがこれをお腹付近に当ててクリアしたために得点には至らなかったが、後から考えれば、このセーブはこの日一番のビッグプレイだった。

 イングランドは、終了2分前、ジェラードがダメ押しゴールをあげ、2-0で勝利した。場内アナウンスは調子づいて、まだ試合が終わらぬうちから「本日のMVPはルーニー!」と報じたが、僕にはGKハートの方が相応しいように思われた。

 ポーランドのエースストライカー、レバンドフスキーは、2点差とするダメ押しゴールが決まるまで危険な存在として光っていた。彼を真ん中に、両サイドに小柄なドリブラーを配したサッカーは決して悪くなかった。ポーランドは、好チームの要素を持ち合わせた、好感度の高いチームだった。このチームがこの組の4位に終わった事実に、欧州サッカーの本質が見て取れる。

 実力拮抗。ひと言でいえばそうなる。逆に言えば、イングランドには秀でた強さが感じられなかった。最大の武器は、ホームのスタンドを埋め尽くすサポーターだというのがまさに実感だ。プレイそのものは愚直。簡単なパスをしばしば引っかけられるシーンも目についた。

 さらにいえば、めぼしい若手選手も少ない。ジェラード、ランパードがいまだチームの中心でプレイする姿から、W杯本大会で、何か大きなことをやってのけそうな気配はしない。

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