W杯出場に沸くイングランド。背中押すサポーターに予選の真髄を見た

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 1973年10月17日、イングランドはホーム「ウェンブリー」で、ポーランドに引き分け、74年西ドイツW杯出場を逃した。1950年のW杯第4回大会に初出場して以来、初めての予選落ちを経験した。
 
 それから40年。当時のことを記憶している人がこの日、ウェンブリーを埋めた観衆の中にどれほどいたかは定かではない。しかし、イングランドサッカー史に残るこの事件を知らないファンは少なかったはずだ。彼らは危機意識を漲(みなぎ)らせていた。

ポーランド戦で先制ゴールを決めたルーニーポーランド戦で先制ゴールを決めたルーニー イングランドは、予選の最終戦を迎え、H組の首位の座に就いていた。しかし、2位で追走するウクライナとの差はわずか勝ち点1。この日、この組の最弱国サンマリノと対戦するウクライナが、勝ち点3を上積みするのは決定的だった。イングランドが本大会出場を決めるためには、勝利が求められていた。

 ウェンブリーには緊張感が漂っていた。すでに出場権を失っている相手のポーランドが、およそ1万人ものサポーターを送り込んできたこともその一因だった。イングランドがボールを保持するや、彼らは激しいブーイングを遠慮なく浴びせかけた。

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