W杯出場に沸くイングランド。背中押すサポーターに予選の真髄を見た (2ページ目)
当初、形勢はほぼ互角だった。ピッチを広く使ったダイナミックな展開を見せたポーランドの方に得点の匂いがしたくらいだった。
ポーランドのCFレバンドフスキーにあわやのシュートを浴びると、やばい、危ない、それはまずいとばかり、イングランド人は発奮した。ほぼ全員が、ありったけの声で檄を飛ばした。火事場の馬鹿力を思わせるイングランド人の熱気で、スタジアムは騒然としたムードに包まれた。
W杯予選の真髄を見た瞬間だった。その数時間前、ベラルーシに敗れ、ひんやりとしたムードに浸っている日本とは別の世界が、そこには広がっていた。
観衆はイングランド選手の背中を、ありったけの力で押していた。イングランドにこれといった決め手はない。無骨で不細工なスタイルながら、それでも彼らは、堂々と前を向いて出て行った。観衆の力をこれほど感じた試合も珍しい。暢気(のんき)な歌声が耳に届くことはなかった。背中を押すためだけのストレートな応援を、徹頭徹尾貫いた。
ポーランドは次第に後退を余儀なくさせられた。4バックを形成する両サイドバックが中央に集まり、イングランドに対して両サイドにオープンスペースを与えることになった。そしてイングランドは、ベインズ(左)、スモーリング(右)の両SBが高い位置をとれるようになると、一気にボール支配率を上げた。クロスボールを上げては、セカンドボールを拾うイングランドらしいサッカーを繰り広げた。
だが、時計は早くも40分 を指していた。前半を0-0で終えると、イングランドの後半の戦いに、焦りが出ることは見えていた。このあたりで先制点を奪っておかないと危ない。そう 思っていた矢先に、高い位置で構える左サイドバックのベインズにボールが出た。そして彼が、「どフリー」の状態からクロスボールを送球すると、中央で構えるルーニーの頭にピシャリと合った。イングランドに先制ゴールが生まれた瞬間だった。
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