【CL】躍進するドイツ勢。秘密はピッチ外の戦略にあり? (2ページ目)

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi
  • photo by AFLO

 さらに2011-12シーズンを見ると、ブンデスリーガの総収入は、前年を上回る18億7100万ユーロ(約2432億円)にまで増加。しかも、(1)から(3)のすべての項目において、近年は急速な右肩上がりを見せている。

 そして注目すべきは、ブンデスリーガ18クラブの総収入における人件費(選手・監督・コーチングスタッフ)の占める割合が、平均で37.8%という点であろう。この数値がいかに安定しているかは、プレミアリーグの主要クラブと比較すれば一目瞭然。2013年4月16日付のイギリス『タイムズ』紙によると、優良経営とされるマンチェスター・ユナイテッドでも、人件費は総収入の50.5%を占めている。ユナイテッドに次ぐ経営規模を誇るアーセナルは60.9%、そして中東資本のもとで強化を続けるマンチェスター・シティに至っては、実に8割を超える87%だ。

 プレミアリーグ20クラブのうち、ほぼ無借金経営の優良クラブはWBA、フルハム、サウサンプトン、スウォンジーの4クラブのみ(2012-13シーズン)。プレミアに残留し続ければ、巨額の放映権料が確約されるゆえ、高コスト体質も維持できる。だが、仮にオーナーがクラブ資本から手を引けば、人件費を賄(まかな)うキャッシュフローが回らなくなり、一気に経営破綻するというリスクがプレミアには存在する。一方、低コストでリスクを回避しているブンデスリーガは18クラブのうち、14クラブが黒字経営だ。

 ドルトムントのハンス・ヨアヒム・ヴァツケCEOは、イギリスのサッカー専門誌『Four Four Two』の取材に応じ、「長い目で見れば、ドイツ流経営が良い結果を生む」と語っている。「投資家を迎え入れて、株式会社形式の経営手法を取り入れれば、いずれクラブは彼らに飲み込まれてしまう。でも、それは我々のメンタリティにそぐわない」。

 ドイツのクラブは社団法人が主流で、チームを別会社化して経営するケースが多い。そして別会社の議決権を社団が有し、最終的にファンが経営方針を決める中心となっているのだ。さらにヴァツケCEOは、こう語った。「ドイツのファンは、自分自身がクラブ全体の一部でありたいと願うからだ。イングランドでは、ファンは基本的に『お客様』という扱いじゃないか。でも、ドイツのファンにそんな呼び方をしたら、ぶっ飛ばされるよ」。

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