【CL】躍進するドイツ勢。秘密はピッチ外の戦略にあり?

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi
  • photo by AFLO

圧倒的な強さでCL準決勝に駒を進めているバイエルン(写真は左・ピサロ、右・ミュラー)圧倒的な強さでCL準決勝に駒を進めているバイエルン(写真は左・ピサロ、右・ミュラー)「ショックだよ。我々がチャンピオンズリーグで敗退するとは......」

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦でバイエルン・ミュンヘンに敗れた後、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督は、そう悔しさをにじませた。そして、ベンゲルはこう続けた。「しかも、イングランドのクラブがどこもベスト8に残らないなんて......」

 近年、イングランドの識者の間では、「ブンデスリーガへの敬意」が浸透しつつある。それは、今シーズンの結果を見てもうなずけるだろう。現在、CLベスト4にはバイエルンとボルシア・ドルトムント、ブンデスリーガの2強が進出。対するプレミア勢(マンチェスター・U、マンチェスター・C、アーセナル、チェルシー)は、ベスト8を前にすべて姿を消した。また、グループリーグでの直接対決を振り返っても、イングランドのクラブはドイツ勢に軒並み負けている。名門アーセナルは、ブンデスリーガ4位のシャルケ04相手に1分け1敗。さらに昨季プレミアリーグ王者のマンチェスター・Cも、ドルトムントの豊富な運動量とクオリティの高い組織的攻撃を前にホームでドロー、そしてアウェーは0-1で完敗している。

 隆盛を誇ったプレミアリーグの名門クラブたちが、なぜ、このように後塵を拝しているのか。その理由を別の角度から考えてみると、近年のブンデスリーガのデータに明確な数字となって表れている。それは、ピッチ外の戦い――すなわち経営面で、ブンデスリーガはプレミアリーグに肉薄しつつあるのだ。

 世界4大会計事務所のひとつ、『デロイト』が発表した欧州5大リーグの総収入(2010-11シーズン)を見ると、第1位はプレミアリーグの25億ユーロ(約3250億円/計20クラブ)。それに次ぐのが、ブンデスリーガの17億4600万ユーロ(約2270億円/計18クラブ)だ。以下、3位リーガ・エスパニョーラ(約2233億円/計20クラブ)、4位セリエA(約2019億円/計20クラブ)、5位リーグ・アン(約1352億円/計20クラブ)。ちなみにこれらの数字は、移籍金収入を除いた数値。つまり、(1)広告収入、(2)メディア収入(放映権料等)、(3)マッチデー収入(入場料収入等)の3大収入項目の総数ということになる。

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