【イングランド】アーセナルは再び頂点を狙える位置に返り咲けるか (3ページ目)
経済学のほかに、ベンゲルはもうひとつ基本的な判断ミスをした。彼は実力がわかっている大人の選手を買うより、アーセナルのユース組織で鍛えた選手でチームをつくることを夢見ていた。
才能があるようにみえる若い選手が本当に偉大な選手になるかどうかを予測するのは、ほとんど不可能だ。10代の選手がプロのフットボールで目に見える成功を収めれば、まちがいなく本物であることがわかる(たとえばクリスティアーノ・ロナウドやウェイン・ルーニー、ガレス・ベイルがそうだった)。だがその頃には、アーセナルより金を使えるクラブが先に目をつけている。
見方によっては、ベンゲルの倹約精神の正しさがようやく証明されようとしているともいえる。UEFAが「ファイナンシャル・フェアプレイ(FFP)」という新ルールを施行したからだ。この制度はヨーロッパのクラブに、手元にある以上の金を使わないよう求めるものだ。プレミアリーグも同様の規制を独自に設けることを検討している。
UEFAのFFPには抜け穴がたくさんあり、2018年に全面適用されても全クラブの赤字がなくなることはないかもしれない。しかしFFPが施行されたことで、すでにクラブの支出はわずかながら減っているようだ。コンサルティング会社のデロイトによれば、プレミアリーグ所属のクラブが昨年使った移籍金は前年より23%減り、5億5000万ポンド(現在のレートで約800億円)だった。
だがFFPがフットボールを変えるということはなさそうだ。むしろクラブもUEFAもうわべだけの芝居をしているようなものだと、シマンスキーは言う。
UEFAがFFPで最も目指しているのは、金のないクラブがつぶれるのを防ぐことだ。チェルシーやマンチェスター・ユナイテッドのように大富豪がバックについているクラブは、つぶれるリスクなどほとんどなく、財布のひもを少し引き締めるためにFFPを使おうとしているかもしれない。
いずれにせよ、一部のクラブはFFPの抜け穴をすでに見つけようとしている。マンチェスター・シティはエティハド航空との間でスタジアムの命名権とユニフォームの胸広告の契約で合意したが、契約金額は10年間で3億5000万ポンド(約510億円)相当とみられている。途方もない額だ。
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