【Jリーグ】引退・柏好文が病と戦った現役ラストシーズンを振り返る「怖さがあった」 (5ページ目)
【時間にすれば15分。それでも...】
そして言葉を続ける。
「ずっと......ピッチに立って初めて病気に勝った、病気を乗り越えたって言えると思っていた。試合に出ずに終わっていたら、治ったとは言えても、乗り越えたとは言えないと思っていた。だから、あの1試合に意味があったと思っていて。それだけ自分にとっても、応援してくれた人にとっても、意味のある、価値のある試合だったかなと」
ピッチに入る瞬間の歓声は、今も脳裏に、心に刻まれている。
「リーグ優勝も含めて、いろいろな経験をさせてもらいましたけど、あの瞬間の歓声はまた違った意味で、忘れられない。この瞬間を、山梨の人や甲府を応援してくれる人たちは待ってくれていたんだなって。自分に期待してくれていた、自分がプレーする姿を楽しみにしてくれた人が、こんなにもたくさんいたんだなということを感じた瞬間でした」
時間にすれば、約15分だった。それでも──。
「正直、プレーで何かを残そうとは思っていなかった。1年を通して、絶対にピッチに帰ってくるというモチベーションでやってきて、それを最後のホームゲームで果たすことができた。だから、自分が試合で活躍するとか、点を取るとか、そういうことにフォーカスするのではなく、自分がピッチに立つことだけを考えていた。
それがきっと、見ている人、応援してくれる人の勇気やエネルギーにつながると思っていた。だから、自分がピッチに立つことこそが、それを本当に示した瞬間だったんじゃないかなって。山梨県民のみなさんからエネルギーをもらったし、あの声援は『おかえり』という声に聞こえました」
(つづく)
◆柏好文・後編>>城福浩と森保一から帰ってきた言葉と「いい思い出」
【profile】
柏好文(かしわ・よしふみ)
1987年7月28日生まれ、山梨県南巨摩郡出身。韮崎高から国士舘大を経由して2010年にヴァンフォーレ甲府に加入する。2012年のJ2優勝には主力として貢献し、J1でも豊富な運動量が高く評価されて2014年にサンフレッチェ広島へ完全移籍。2015年のJ1優勝時も存在感を示し、広島に欠かせぬ選手となる。2025年に12年ぶりの古巣復帰を果たし、同年11月に引退を発表。Jリーグ通算408試合37得点。ポジション=MF。身長168cm、体重62kg。
著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。
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