【Jリーグ】引退・柏好文が病と戦った現役ラストシーズンを振り返る「怖さがあった」 (4ページ目)
【サッカーができるありがたみ】
アスリートとはほど遠く、鏡を見れば、かつての自分の姿はなかった。それでもなお、くじけることなく練習場に足を運び続けたのは、「甲府」への想いだった。
「サッカーしている時は、自分の身体じゃないと思って割りきっていました。だから、たとえミスをしても、うまくいかなくても、自分の身体じゃないからって。
それ以上に、ピッチに居続けることが大事で、その意義を自分に言い聞かせていました。自分がピッチにいることに何かしら意味があるし、何かを伝えることができるんじゃないかって。だから、どんな状況でも、這いつくばってでもピッチに戻るっていう覚悟で、ずっとやっていました」
柏好文が病気に打ち勝ってピッチに立ったホーム最終戦 photo by ©VFK2025この記事に関連する写真を見る 8kgも増加した体重は、ステロイドの錠剤が1錠減るのに比例するかのように、徐々に減っていった。
「もともとポジティブな声かけや、チームの矢印をいい方向に持っていく働きかけは、広島時代もできると思っていたので、プレーはもちろん、そういう空気感をつくることは心がけていました。
自分から話をするわけじゃないけど、年齢の若い選手が聞いてくれば、技術面だけでなく、広島時代の契約やお金の話もしたりして。みんな、そういうところにも憧れを抱いて、プロのサッカー選手になったわけだから、少しでも高みを目指すモチベーションになったらいいなって」
チームのボール回しに加わっただけで、サッカーができることへのありがたみを感じた。本来の自分ではないと思いながらも、若手選手に「ボールが奪えない」と言われた時は、技術が色褪せないことを実感した。
夏くらいから練習試合にも出場していた柏がコンディションを取り戻し、メンバー入りしたのは11月23日のJ2リーグ第37節だった。78分に途中出場すると、今季最後のホームゲームでJITリサイクルインクスタジアムのピッチに立った。
その光景を思い出しながら言う。
「自分がサッカー選手であることを感じられたし、がんばってきてよかったなって思いました。サッカー選手ってやっぱり非現実ですよね。あの応援されている感覚、喜びは本当に特別でした」
4 / 5

