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【Jリーグ連載】ヴェルディのアカデミー時代、試合に出られなかった選手が「プロになるため」に選択した道 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 環境が変わったことで、横山にも変化が生まれた。

 本人曰く、北陸大学は「敷地内にクラブハウスと人工芝のグラウンドが2面あって、もしかしたらJ3のクラブよりもいいんじゃないかなっていうくらい」の充実した施設を備えていたが、むしろ「サッカー以外にやることがなかった」という環境が、横山をメンタル面で大きく変える要因となった。

「僕は本当に高校時代まですごく子どもだったので、初めて親元を離れてひとりでいろいろとやるようになって、精神的にも変わりました」

 なかなか試合に出られないユース時代を経て、「当時の自分にとっては、やっぱり試合に出て自信をつけることが、たぶん一番必要だった」と横山。大学進学後、1年生から試合に絡めるようになり、「対戦相手のレベルとかは関係なく、試合に出て、自信をつけることができたっていうのが大きかったのかなと思います」。

 ヴェルディのアカデミーで技術や個人戦術を磨いてきた横山に、新たな"刺激"がプラスされた瞬間である。横山は言う。

「北陸大学は、いろいろ教えられるというよりは、自分で自分の課題を見つけて、自分自身で成長していかなきゃいけないっていう環境でした。僕は大学に入って、初めて本気になって自分がプロになるために必要なことをやり始めたっていう感じだったと思います」

 必ずしもユース時代に目立った成果を残せなかったとしても、プロへの道は切り開ける。その意味においては、これから先、ヴェルディユースでプレーする高校生たちにとっても、横山はいいお手本になりうるのかもしれない。

 だが、横山自身は、「正直、自分はめっちゃ運がよくて、たまたまプロになれただけ」だと言い、そんな見方に対して自嘲気味に応じる。

「はたして自分の生き方が正しいかどうかって評価したら、多分100 回同じことをやっても、1回こんな感じになるかどうかで、たぶん99回はもうサッカーを続けられていないと思います。

 僕はサッカー選手である前にひとりの人間なので、ひとりの人間として何を表現していくのかっていうことをすごく大事にしています。そういう意味では、サッカー以外もいろんな道があるし、正直、サッカーだけ追っかけているのもどうなのかなっていう気持ちもあるので難しいですね(苦笑)」

 横山はそう言うと、「僕、こういうジレンマもあるから、あまり無責任に『諦めずに最後まで頑張れよ!』とは言えないんです」と続け、苦笑いを浮かべる。

 しかし、横山はしばらく思案したあと、「でも」とつないで、「アホって大事だなっていうのが、自分のなかで今、キーワードなんです」と言って笑い、あとに続く選手たちにメッセージを送る。

「現実を見るのも大事だけど、例えばサッカー選手になるっていう、その夢を追う挑戦自体に価値を見出せるなら、周りの人が『絶対無理だ』って言ったとしても、そこはアホになって挑戦するべきだと思います」

(文中敬称略/つづく)

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