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かつての常勝軍団・鹿島アントラーズが9年ぶりにJ1制覇 それでも理想はもっと先にある「(現在の到達点は)100のうち5」 (2ページ目)

  • 池田博一●取材・文 text by Hirokazu Ikeda

【「ブレないからこそ、鬼さんについていこうと」】

 舩橋の言葉どおり、今季は複数の若手が先達に触発されて飛躍的に成長した。21歳のDF津久井佳祐、21歳のDF溝口修平、18歳のFW徳田誉といった面々がチームを底上げ。日常の積み重ねが全体のレベルを押し上げ、自然に切磋琢磨する空気を醸成していった。

 ピッチ外の尽力も、優勝を支えた大きな要因のひとつだった。シーズン中盤には負傷者が相次ぐ難局を迎えたものの、中田氏を中心に強化部が迅速に動いた。クラブOBである山本脩斗氏と前野貴徳氏は、毎週末にスカウトとして他クラブの試合を視察し、可能性のある選手を精査することを託されていた。必要なポジションの選手リストを常に更新し、状況が訪れれば即座にアプローチ。千田海人や小川諒也の獲得につなげた。

 強化部は鬼木監督からのリクエストにも、迅速に応え続けた。食事や前泊のルール、アウェー遠征の道程まで、準備の効率と選手のコンディションを考慮して可能な限り突き詰めた。小さな改善を積み上げ、勝つために最適な環境をクラブと現場がともに構築していったのだ。

 勝つためにできることはすべてやる――その姿勢は、現場だけでなくチーム全体を貫いていた。

 今季の鹿島は、連敗しても、連戦でうまくいかない時期があっても、チーム全体の空気が後ろ向きに傾くことはなかった。むしろ、苦しい状況のときこそ顔を上げ、前に進む力が上回った。

「チームは生き物」

 長きにわたりアントラーズの強化部長として先頭を走った鈴木満強化アドバイザーがよく言う言葉だ。負けているときこそ、一体感を持ってチームのために戦わなければならない。副キャプテンの植田が振り返る。

「うまくいかないときに、コロコロ変わってしまうことがある。これまでも、選手として迷いが出てしまって難しくなる経験をしてきた。でも、鬼さん(鬼木監督)はどんな状況でも言うことが変わらない。ブレないからこそ、鬼さんについていこうと思えるんです」

 同じく副主将の鈴木もそれに同調する。

「年齢を重ねると、なかなか言われなくなってくるもの。でも鬼さんは、中心選手にも高い要求をし続けた。そこに僕らが向き合うことによって、ほかの選手もやらなければいけないという空気になる。そこはよく考えられている。さすがだなと思いました」

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