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ジダンに憧れたジェルマンがストライカーとして活躍できた理由を語る 期待するサンフレッチェ広島の若手3人とは? (3ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Yoichi Igawa

【将来は強化担当として日本人選手を欧州へ?】

「いや、特別に誰というのはないが、良い選手の動きはすぐに試すようにしてきた。今なら、トッププレーヤーのプレーが簡単に見られるのだから、僕らの時代よりも随分楽に研究できると思う」

 このスポーツをプレーしたことのある人ならわかるはずだが、ペナルティーエリア内で瞬間的にボールを頭や足でとらえてゴールを奪ったとき、どうしてそんなことが起きたのか一瞬、わからなくなることがある。

 ただ、できた。なぜかはよくわからないけれど。

 コーナーキックからのヘディングを決めた時、キッカーがボールを蹴った次の瞬間、自分の頭の前でボールが弾けてゴールになっていた──そんなことが何度かあった。

 そうした得点者の勘とか間のようなものを研ぎ澄ませていった形が、ジェルマンの身上のひとつなのだろう。特別に身体能力に恵まれているわけではないが、感覚的にゴールを奪うストライカーの極意──そんなものがあれば、後進に伝えてほしいものだが、彼は率直にこう応じた。

「35歳という年齢を考えれば、もうこのレベルのフットボールを長く続けるのは難しいと思う。でも現役引退後は家族と過ごす時間を長く作りたいので、監督やコーチをするつもりはないんだ。フットボールは大好きだけど」

──フットボール・ディレクターなど、また違う形でもこの競技に携わることはできます。

「そうだね。実際に、興味深い仕事だと思う。私の街、モナコでは今、ミナミノ(南野拓実)が活躍している。彼こそ、日本人選手の高いクオリティーを証明している選手だ。私は個人的にも日本の選手の優れた能力を知っているから、もし本当にそんな職務に就くことになれば、少なくとも2、3人は日本人選手をヨーロッパに連れていくよ」

 ジェルマンはにこやかに、また同じフレーズを口にした。

(了)

前編 >> 今季Jリーグ随一のキャリアを誇るジェルマンが日本のレベルの高さに驚愕「大きな可能性がある」
中編 >> エムバペの覚醒を間近で見たジェルマンがモナコでのあのシーズンを振り返る「かけがえのないもの」

ヴァレール・ジェルマン Valère Germaim
1990年4月17日生まれ、フランス・マルセイユ出身。元フランス代表のブルーノ・ジェルマンを父に持ち、モナコの下部組織からファーストチームに昇格した。2016-17シーズンには当時10代のキリアン・エムバペらと共にリーグアンを制し、チャンピオンズリーグのベスト4に進出。その後、マルセイユ、モンペリエ、マカーサーFC(オーストラリア)を経て、今年2月にサンフレッチェ広島に加入した。

著者プロフィール

  • 井川洋一

    井川洋一 (いがわ・よういち)

    スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

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