今季Jリーグ随一のキャリアを誇るジェルマンが日本のレベルの高さに驚愕「大きな可能性がある」
サンフレッチェ広島 ヴァレール・ジェルマン インタビュー 前編
今のJリーグでは、さまざまな国からやってきた多くの外国籍選手がプレーしている。彼らはなぜ、日本を選んだのか。そしてこの国で暮らしてみて、ピッチの内外でどんなことを感じているのか。今回はサンフレッチェ広島のヴァレール・ジェルマンに話を聞いた。華やかなキャリアを持つフランス人アタッカーの横顔に迫る。
【父は欧州で準優勝した元フランス代表】
フランスを訪れる時、現地の人に英語で話しかけてもうまくいかないことがある。なぜなら彼らは母国語に誇りを持っていて、いくら英語が現代のリングワ・フランカ(世界共通語)だとしても、そしてその内容を理解したとしても、当たり前のようにフランス語で返してきたりする。実際、外来語を規制する言語政策もあるくらいだ。
だからこの日のインタビュイーであるフランス人アタッカー、ヴァレール・ジェルマンにも、まずはフランス語で挨拶をしてみた。その上で英語で質問をさせてもらいたいと伝えると、オンラインの画面上の彼はにこやかに微笑み、親指を立てて「もちろん!」と快諾してくれた。
にこやかにインタビューに応じたヴァレール・ジェルマン photo by Yoichi Igawa
当然、フランス人にも色んな人がいる。彼は親切なタイプのようで、あるいはそんな気遣いをしなくても、快く対話を始めてくれたかもしれない。いずれにせよ、幸先の良いインタビューの始まりとなった。
現在35歳の元フランスU-21代表は、今季のJリーグでもっとも華やかなキャリアを持つ選手のひとりだ。父はジャン=ピエール・パパンやドラガン・ストイコビッチらと共に1990-91シーズンのヨーロピアンカップ(現在のチャンピオンズリーグの前身)で準優勝したマルセイユの一員で、フランス代表の経験も持つブルーノ・ジェルマン。息子のヴァレールはマルセイユで生まれ、下部組織を過ごしたASモナコでプロになった。
2016-17シーズンには当時まだ10代のキリアン・エムバペ(現レアル・マドリー)、ベルナルド・シウバ(現マンチェスター・シティ)、ファビーニョ(現アル・イティハド)、ファルカオ(現無所属)らと共にリーグ・アンを制し、チャンピオンズリーグではマウリシオ・ポチェッティーノ監督(現アメリカ代表)が率いたトッテナム・ホットスパー、ペップ・グアルディオラが統率したシティ、トーマス・トゥヘル監督(現イングランド代表)が指揮を執ったボルシア・ドルトムントを下して準決勝に進出した。
そこでユベントスに敗れたものの、新鮮な驚きをもたらした伏兵の躍進に、ジェルマンはチームリーダーのひとりとして大きく貢献した。さらに翌2017-18シーズンには、移籍したマルセイユでヨーロッパリーグ準優勝を遂げている。
そんなジェルマンがサンフレッチェ広島に加入したのは、今年2月下旬のこと。2023年夏に初めてフランス(モナコを含む)を離れ、オーストラリアのマカーサーFCに移り、そこで2年弱を過ごしてから日本にやってきた。まずはその理由から、尋ねてみた。
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著者プロフィール
井川洋一 (いがわ・よういち)
スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

