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今季Jリーグ随一のキャリアを誇るジェルマンが日本のレベルの高さに驚愕「大きな可能性がある」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Yoichi Igawa

【率直な言葉で日本の好印象を語る】

「シドニーで2シーズン目を送っていた時、代理人に日本でプレーする可能性を探ってもらったんだ。Jリーグはアジアで最もレベルの高いリーグだと聞いていたから、ぜひそれを経験してみたかった。せっかくオーストラリアでアジアのフットボールに触れることができたからね。当初は、Aリーグのシーズンを終えてから夏に実現すればいいと考えていたのだが、広島がすぐにでも入団してほしいと言ってくれたので、2月に移籍する運びとなったんだ」

 近年、日本は欧米で評価を高めているが、なかでもフランス人の日本贔屓は顕著に思える。筆者が3年前に訪れたパリ郊外のサンドニの宿の女性は、日本に行くのが夢だと目を輝かせて言っていたし、漫画やアニメ、日本食をはじめ、多くのフランス人が日本の文化や食事を好んでいる。ジェルマンにも私たちの国への興味があったのかと思ったが、ここでも彼はステレオタイプなフランス人像を覆してきた。

「もちろん、日本が良い国だということは漠然と知っていた。寿司など、おいしい日本食はフランスでも広く親しまれている。でも率直に言って、私は日本に特別な興味を持っていたわけではない。広島に来た理由も、フットボール的なものだ。キャリアの終盤にある自分が、最後にもう一度レベルの高いリーグで通用するか、試してみたかったんだ」

 実際に住み始めると、噂に聞いていた日本の生活の良さに驚かされたという。

「人々は他者を敬い、どこに行っても安全だ。家族のいる私には、治安の良し悪しは生活をする上で重要なんだ。私たちの家があるモナコも治安は良いが、人口は4万人に満たない。かたや日本には1億2000万人以上が暮らしているというのに、安全な社会が成り立っている。これはすごいことだと思う。驚かされたよ。

 それから寿司はもともと好きだったけど、それ以外にも広島焼きなど、地元の味を知ることができて嬉しいね。月に2、3回は、焼きそば入りのお好み焼きを食べているよ」

 ピッチ上には、より大きなサプライズがあったようだ。ジェルマンは続ける。

「最初のトレーニングで、まず驚かされた。日本人選手のクオリティーは本当に高く、フランスで接してきた選手よりも優れていると感じるところもある。たとえば、ディフェンダーのボール捌きやフィードの精度。日本には、50メートルほどのパスを難なく味方に届ける守備者がざらにいるよね。

 それからプロフェッショナリズムにも感銘を受けた。全体練習の後に自主的にトレーニングを続ける選手は多いし、試合中には足を止めず、規律ある動きを続ける。また試合に出られなくても、不平や不満を口にしたり、態度に表わしたりする選手が少ない。そしていつか出番が来ると信じて、ハードワークを続ける。おそらくこれは、日本人の仕事に対する向き合い方なのだろうと思う。すばらしい。フランスでは、ベンチで不貞腐れている選手がいるのは、日常的な光景だ」

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